イクメンMIKKOの世界一しあわせな子育て_2

「森と湖の国」といわれる自然豊かな北欧の国フィンランド。多くの日本人にとってオーロラやサンタクロース、ムーミンのイメージが強いと思いますが、フィンランドが世界有数のイクメン先進国であることはあまり知られていません。最近テレビや新聞で取り上げられて話題になっているフィンランド流育児本の著者で、駐日フィンランド大使館の報道・文化参事官のミッコ・コイヴマーさんは、3年前に来日した際、「イクメン」という言葉が日本社会で関心を集めていることを知り驚いたそうです。なぜなら、フィンランド人の男性が育児に積極的に関わることはごく自然なことで、イクメンに該当する言葉がフィンランドには存在しないからだそうです。今日は、ミッコさんに著書やご自身のイクメン体験についてお話を伺いました。

babytopia:まずは本の出版おめでとうございます。僕も1歳4ヶ月の娘を毎日保育園に送り迎えしたり、病気の時は終日一人で世話をすることもあったりと、子育てには積極的に関わっているので、ミッコさんの本には共感する点がとても多かったです。本を読んで非常に驚いたのが、フィンランドでは子育て世代に対する社会や職場の支援がとても充実しているということです。特に素晴らしいなと思ったのが、政府からプレママに贈られる「母なる人への贈り物パック」です。

ミッコさん:そうですね、箱の中には赤ちゃんの服や、おむつ、ガーゼタオル、肌着、帽子など、赤ちゃんのお世話に必要なアイテムが詰まっています。クッションも入っていて、箱の底に敷いてベビーベッドとして使うこともできるんですよ。

babytopia:まさにスターターキットで、なかなか買い物に行けないプレママにとってはとても便利ですね。全ての人が受け取ることができるのですか?

ミッコさん:はい、年収や家庭的なバックグラウンドに関わらず、お母さんになる全ての女性が平等に受け取ることができます。中身の総額は270ユーロ(約3万5千円)で、パックの代わりに現金を受け取ることもできますが、その場合は約半額の140ユーロ(約1万8千円)が支給されることになります。1930年代から始まったもので、他国には例が見られないフィンランド固有の制度なんですよ。

babytopia:日本でも政府や企業による子育て支援が改善されつつありますが、フィンランドの先進的な取り組みに比べると、まだまだ遅れていると痛感しました。例えば、ミッコさんは息子さんが生後13ヶ月のときに奥さんが職場復帰をされ、ミッコさんが2ヶ月間の休暇を取得してフルタイムで子育てをされましたよね。日本の大半の企業では、業務や昇進に支障をきたすので、男性が長期で育児休暇を取得することは非常に困難です。

ミッコさん:2ヶ月の父親休暇の内訳は、1週間が冬期休暇、3週間は次の夏休みの前倒し、残りの4週間は「父親休暇」と呼ばれる国の制度を利用しました。「父親休暇」取得中は、給与の約70~75%が支払われます。2011年には、フィンランドの男性の約80%がこの父親休暇を取得しています。

babytopia:これはママの職場復帰を促進する上でもとても有効な施策ですね。それにしても、パパが一人で2ヶ月間子育てをフルタイムで行うというのは、想像もできないくらい大変なことだと思います。ミッコさんの場合、子どもの世話の仕方や離乳食の作り方など、事前にトレーニングを受けたりしましたか?

ミッコさん:子どもが産まれたときから子育てに深く携わっていたので、特にトレーニングを受けなくても、やるべきことは全部わかっていました。離乳食も、スパイスなどを使わないので、大人の料理よりもずっと簡単ですよ。確かに、朝から晩まで休憩がないですし、言葉も通じないので、1人でずっと世話をするのは大変な作業でした。息子が歩けるようになったばかりのときで活発に動き回っていたので、けがをしないように常に注意をしていなければならず、妻が帰宅する頃には、毎日ヘトヘトになっていました。オフィスでの仕事よりずっと大変ですね。でも子どもの成長を間近で見ることができ、とても嬉しかったです。また、フルタイムの子育ての厳しさを知ることで、妻や自分の両親を今まで以上に尊敬するようになりました。本当に多くのことを教えてくれる素晴らしい時間でした。with Mikko-san

babytopia:なるほど、ミッコさんの場合は子育ての下地がしっかりできていたわけですね。日本では子どもが産まれた直後からパパが仕事で忙しく、子育てはママに任せっきりということも珍しくありません。ミッコさんをはじめ、フィンランド人男性の多くが子育てに積極的に参加している背景には、社会保障制度の充実だけでなく、家庭内における男女平等も大きな役割を果たしていると本を読んで感じました。日本では「男性の義務」、「女性の義務」のように昔ながらの固定観念がまだ強く残っていますが、フィンランドでは男女の定義と役割が非常に自由ですよね。これは昔からそうなのでしょうか?

ミッコさん:フィンランドでは、男女の役割という点においてとてもリベラルで、性別ではなく、個人の興味や能力で役割を担うことが多いです。例えば我が家では妻のエリサの方が運転が上手いので、運転はいつも彼女に任せていますし、家具の組立てなども妻が担当します。一方、私は掃除や洗濯が得意で、これらは私の担当です。私のお父さんも家事を積極的に行っていました。フィンランド人がいつからこのようになったかはわかりませんが、フィンランドは伝統的に男女平等社会で、共働きの家庭が多く、女性が経済的に独立しています。職場同様に、家庭でも男女平等という考え方が、自然と定着しているのだと思います。

babytopia:僕は以前勤めていた会社で、アメリカのシリコンバレーに出張することが多かったのですが、現地のアメリカ人は18時には退社し、夜になるとオフィスに残っているのは日本人だけということがしばしばでした。最初は「もっと働けよ」なんて思ったりもしましたが、実はアメリカ人社員たちはPCを自宅に持ち帰っていて、子どもたちと夕食を食べ、家族で時間を過ごしたあと、家で仕事をしているんですよね。それを知り、とても家族の時間を大切にしているなと感心しました。フィンランド人は、アメリカ人のさらに上をいっていて、17時には退社をし、その後は完全に仕事を離れて家族と過ごすということですが、それでもノキアやロビオ(人気ゲーム「アングリーバード」の製作会社)のような世界的な企業を多く輩出しているというのはすごいことですね。

ミッコさん:フィンランドでも自宅に帰ってからPCや携帯で仕事をしている人はいます。国際企業になれば、海外との電話会議などでどうしても夜遅くに働かなくてはいけない人もいると思います。ただ、フィンランド人はとても自由時間を大切にするので、平均的なフィンランド人は朝9時から夕方17時まで8時間働くというのが基本です。私たちには「自由な時間はお金よりも尊いものだ」という考えがあり、例え子どもがいない人でも、17時には仕事を終え、運動や趣味を楽しみます。これは日本人との大きな違いだと思います。

babytopia:フィンランドの男性の中には、子どもが産まれた後に生活が一変し、個人の時間が取れなくなることで体重が増えたり、鬱になる人がいるそうですね。これは同じ男性の立場からすると大変興味深いですし、頷ける点も多いと思いました。僕は娘が産まれたときはまだ会社勤めだったのですが、仕事は忙しくなる一方で、週末はフルに子育てとなると、運動する時間は全く無くなってしまいます。自由時間がなくなるのは当然とはいえ、男性にとって大きなストレスであることは事実ですよね。ミッコさんは子どもの頃から運動好きだったそうですが、最近は運動をできていますか?

ミッコさん:週に1回ジムに通うか、サッカーをしています。本当は2回は行きたいのですが、難しいですね。子どもが産まれるまで多くの自由時間を手にしてきたフィンランドの男性にとって、それがなくなってしまう衝撃の大きさは、日本人男性よりも勝るのではないでしょうか(笑)

babytopia:本にも書かれていますが、「全てのイクメンの背後には、必ずイクウィメンの存在がある」という言葉は、多くの日本のパパが共感する言葉だと思います。僕の個人的な経験からしても、妻との関係が良好であれば、子育ては必ずうまくいくと思います。ミッコさんの場合、エリサさんとパートナーシップを強める上で心がけていることはありますか?

ミッコさん:特別な秘訣はありませんが、子育てについて二人でよく話をしますね。子育ては疲れますし、決して毎日が楽しいわけでもありませんが、二人でエンジョイすること心がけています。また、生活の全てが子育てになってしまうと、子どもがいる理由や、妻と何故一緒になったのかなど、大切なことを忘れてしまいがちです。時には原点に立ち返って、妻を好きになった理由を考えることも大事だと思います。我が家では、夜20時には子どもたちを寝させ、毎日少しでもいいからエリサと二人きりの時間を作り、大人話をしたり、映画鑑賞をしたりするようにしています。

babytopia:とてもロマンチックですね。確かに子育てだけの生活になってしまうと、ついつい妻と口論が増えてしまったりするので、子育て以外のことについて二人で楽しむ時間を作ることは大切ですよね。それでは最後に、ミッコさんから日本のイクメンやイクウィメンに対してメッセージをお願いします。

ミッコさん:日本は、社会保障制度や人々の働き方など、フィンランドと異なる面が多いかもしれませんが、そうした状況に関わらず、子どもが幼いうちに一緒に過ごす時間を最大化することをお勧めします。子どもが子どもでいるのは、ほんの一瞬なので、親は子どもを十分に慈しむべきだと思います。また、イクメンが増えることは家族全員にとって利益になります。お父さんにとっては、子どもと過ごす時間が増えることで子どもとの相互理解が深まり、良好な親子関係を築くことができます。また、子どもにとっては、お父さんが身近にいることで、お母さんだけでなく、お父さんもロールモデル(お手本)となり、よりバランスのとれた世界観や生活感を培うことができます。ママにとっては、家事や子育てのサポートをしてもらえて助かるし、職場復帰をして生活の質の向上させることもできます。女性の社会復帰が進めば、高齢化社会を迎え、多くの労働力を必要とする日本にとって国力の向上につながります。

babytopia:今日は素敵なお話をたくさんお聞かせ頂きありがとうございました!ミッコさんの本には、日本でもイクメンが増えるヒントがたくさん含まれているので、babytopiaのユーザーの方々にも是非お勧めしたいと思います。

ミッコさん:こちらこそ今日はありがとうございました!私の本で日本にもイクメンが少しでも増えればとてもうれしいです。

インタビューを終えて:

フィンランドでは長年の取組みの結果、「国の社会保障制度」、「職場の支援と理解」、「夫婦間の自由な役割分担」の3つが整い、「世界一しあわせな子育て」が実現できたことがよくわかりました。日本におけるイクメン推進活動も、国・企業・家庭が三位一体となった取組みにしていかないと、育児の負担を家庭に強いる形になってしまい、フィンランドのようにパパもママもハッピーになれる子育てになっていかないと思いました。インタビューで特に印象に残ったのが、ミッコさんの家庭では、「男性の義務」や「女性の義務」にとらわれない平等な精神で夫婦がお互いを思いやり、それぞれが得意なことをして子育てに貢献するという姿勢です。この点は是非我が家でも見習いたいと思います。

インタビューの場にはミッコさんの奥さんや息子さん、娘さんもいて、活発に走り回る娘さんにやさしく声を掛けながらも、僕の質問に真摯に答えてくれたミッコさんは、日本のパパがお手本にしたいイクメンだと思いました。しあわせな子育てを実現するヒントがたくさん詰まったミッコさんの本は、パパだけでなく、ママにも是非読んでいただきたい珠玉の一冊です。

【ミッコ・コイヴマーさんプロフィール】

駐日フィンランド大使館報道・文化担当参事官。1977年、フィランド共和国生まれ。1997年ヘルシンキ大学に入学。日本に関する研究で修士号を取得。2003年から1年間、早稲田大学に留学。大学院修了後、独立系メディア・サービス・エージェンシーなどを経て、2010年11月より現職。プライベートでは妻と1男1女の子どもたちとの4人家族。

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